言葉 & reading

時間と戦えない怠け者の戯言

大人になり再読したらこころを読むべきこころがなくなっていた話

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今週のお題「読書感想文」

 

青春時代に夏目漱石のこころを読んでいたく心を揺さぶられた。(オブラートに包みつつもネタバレてますのでこれから読む方はお気を付けください)

その後こころは我が本棚の正式メンバーとなり(偉そうに)、新潮文庫のプレミアムカバーで外観も美しく生まれかわり重鎮として並べられているのだが、最近無性に読みたくなったので読んでみたところ思っていた以上に自分が大人になりすぎていたようで、先生の気持ち、Kの気持ち、わたしの気持ち、前みたいに共感出来なくなっておりちょっとショックをうけた。

 

明らかに昔と読後感が違う。しかも読んでいる最中ですら、個々の行動に苛立ちを覚える。わたし(主人公?)に対しては若干の図々しさを覚えたくらいだが(でも彼がグイグイいってくれないと物語のボスである先生が心を開いてくれなかったと思われる為仕方ない)、Kに対しては様々な負の要素が偶然重なってそういう行動をとってしまったというのもわからなくはないが、その要因のひとつに先生が絡んでいたとしても、そもそもKの苦境を察して下宿先を紹介してくれたのは先生だし、お嬢さん(この表現は文中そのままで説明してますが、先生の奥さん)とKが付き合っていたわけでもないし、あとK自ら悪い方悪い方に進んでいるように感じ、宗教はまだしも哲学にも傾倒しているのであれば尚更何故そこ選んでしまったかなと悔やまれる部分はある。

 

先生に至っては生い立ちでのゴタゴタプラス友人Kの事件で結構不幸ではあるかもしれないが、Kが先生に遺した手紙の内容に恨み辛みの内容は一切ない。

もしかしたら若干先生にムカついていたかもしれないが一時の感情に流されるのはよくないとKは理解していてそこまで先生を陥れるような言葉はあえて残さないように努めた可能性だってある、Kは自分自身の生きた痕跡も残したいわけではなさそうに自分にはみえたので、罪悪感を与えたいとは考えていなかったはずだ。先生は確かにちょっとセコいところがあったかもしれないけど略奪ってわけでもないし、そこで壊れてしまう友情だったら引きずる必要性を感じないし、Kは純粋で真っ直ぐな性格で描きだされており、推理小説に頻繁にでてくるような性悪な奴等とは違うだろうし、結局Kに聞いてみないとわからないけど…というかわからないんだからもういいはずなのに、先生ときたら素敵な奥さんがいるにもかかわらず昔のことをいつまでも悩みやがって〜、しかも独り抱え込みやがって〜、しまいには子供がいないのは過去の罪のせいだとか考えてるっぽいし、どんだけウジウジ闇ためこんでんだよ!と思ってしまう自分、そんな気持ちで読んでいるからか最後の先生の決断にも勿論納得できず、なんでだよ!バカヤロー!ってなった。感情移入し過ぎたのか、それとも薄情になり過ぎたのか。

 

登場人物の行動により物語が美しく彩られていることを理解しているつもりではあるが、歳をとると昔見えていたものが、全く違って見えるというのは本当だ。逆にもう老いて見えなくなっていることもあるだろう。絵を白い紙に描くのとうす汚れて白くもない紙に描くのとでは出来上がった作品の雰囲気も色彩も異なるのと同じことかもしれない。

 

割と同じ本を何度か読むことが多いが、その中でもこころは、昔の記憶のまま留めておけば良かったと思う物語の一つだ。海外ドラマのコールドケースみたいに、過去の犯罪暴かれてモヤっとした気分。とりあえず奥さんの晩年には幸せが訪れていますように。

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