今週のお題「運動不足」
セリヌンティウスの3日間をふざけて妄想。
太宰治の走れメロスは、私の中では読み返す度にジワジワコメディ感が増してくる中毒性高めの物語である。最後に『古伝説とシルレルの詩から。』とあるように伝説風に作られた物語なので、そんな額面どおりにとる作品じゃないということは重々承知しているが、もう喜劇の沼から抜け出せなくなっているのでどうしようもない。
お題の運動不足に因んで、メロスの親友セリヌンティウスは囚われの最中どのような運動をしていたか妄想してみた。まずはあらすじから説明。
(以下物語のネタバレあり)
ストーリーのあらすじ(コメディタッチ)
村の牧人のメロスは、大切な妹の結婚式の衣装や食料を買うために訪れた街の市民から聞いた王様の邪知暴虐な行動に激怒し、王様をやっつけに一人短刀をもって城に突っ込んでいくも、あえなく御用となる。
処刑される前に妹の結婚式にどうしてもでたかったメロスは、無二の親友であるセリヌンティウスを人質としておいていくので三日だけ待ってもらえない?もし戻ってこなかったらセリヌンティウスを私の代わりに殺していいからさー、と王様に勝手に提案する。わけもわからず深夜に王城に連れてこられたセリヌンティウスだったが、事情をきいてあっさり承諾。
超特急で村に戻ったメロスは妹に急に明日結婚式を挙げろと言い始め、うっかり寝過ごしたり、婿の説得に夜通し時間をかけたりしながらも、なんとか予定通り結婚式を挙げさせることに成功。だが再び寝過ごしてしまい、途中焦ったり諦めが入ったり歌ったり泣いたりしながら、犬を蹴飛ばし山賊を殴り倒し人間とは思えない速さでセリヌンティウスのもとに戻るが軽く遅刻する。しかしセリヌンティウスの弟子から恨み節を聞きつつも必死に走ったおかげで、死刑台でまだ死刑を決行されていなかった親友と無事再会をはたす。セリヌンティウスにぶん殴ってもらい、王様に友達申請されたメロスは、市民から喝采をあび、最後に少女からマントをもらい、自分が全裸だったことに気づかされ、「キャッ、恥ずかしい」となる話。
妄想1日目 動きの少ないトレーニングで体幹や筋肉を鍛えていた
深夜に恐らくたたき起こされ城に連行され囚われの身となったセリヌンティウスだが、おバカな友人を持ったことに同情する者も多く、1日目は檻の中では割と自由に動けたかもしれない。少ないスペースで取り入れやすい運動といえば、筋トレや動きの少ない体幹トレーニングだ。
腹筋、背筋、腕立て伏せで筋肉を鍛え、クランチやヨガのポーズで体幹を鍛えて運動不足を解消していたのではないか。本気で迎えに来てくれると信じている神様級のいい奴だし、石工の仕事は割と体力使いそうなので、助かった後のことも考えてひたすら鍛えていた。
妄想2日目 過酷な労働を強いられていたので、運動不足どころか過労の方が心配だった。
2日目は他の囚人と同じように(そんなの出てこないけど妄想です)危険で過酷な重労働をさせられていた可能性もある。そうなると運動不足もなにもない、重いものを運ぶ往復運動かもしれないし、もしかしたら罰ゲームのようにメロスばりに走らされていたかもしれない。いつぞやの奴隷のように闘技場で虎と戦ったりしてたかもしれない。こうなると過労のほうが心配である。
妄想3日目 メロスを殴るイメージトレーニングを繰り返していた。
最終日は身動きとれずに囚われていたということも考えられる。そうなるとできるのはイメージトレーニングくらいだ。メロスが走っているから自分も一緒に走るイメトレをしていたかもしれないが、疑ったのが一度だったとしても、なんでこんなことしたのかと多少の鬱憤が溜まっていてもおかしくないため、再開の時はメロスが殴れといってこなくても一発ぶん殴ろうと、ひたすらボクシングのイメトレをしていた。
最後にこんな一幕がある。
セリヌンティウスはすべてを察した様子で首肯き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。
太宰治 走れメロス
そうだよねそうだよね、そらあ頭来るよね、と思ったのもつかの間
メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。私はこの三日間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない
太宰治 走れメロス
うえぇえ?! セリヌンティウスさん、あんた凄すぎだろ…。でも傍若無人なメロスと、邪智暴虐な王様と上手くやっていけるのはあんただけだよ。
以上で妄想終わり!解散!
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