『葡萄が目にしみる』の乃里子に捧げたい、あなたの芋っぽさに救われた人間が少なからずいたで賞

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今週のお題「いも」

『葡萄が目にしみる』は芋っぽい主人公乃里子の自意識ダダ漏れの青春小説である。(ネタバレなし、ですがストーリーの概要について書いています)

乃里子は、見た目パッとしない、芋系女子。高校という閉鎖的な空間の中で周囲に対して人一倍敏感に反応し、これといった目標もなく、何かロマンチックなことが起きないかと密かに期待している女子高生。

二次元の世界に主人公の面接があったら落とされる確率が高い主人公、男性主人公のヒロインの面接があったら、きっと書類選考で落とされるようなタイプ。

では魅力のない主人公かといわれればそうではなく、むしろあっという間に読み終えてしまうほど夢中になれる物語だった。その理由は主人公乃里子の芋っぽさに他ならない。

乃里子は、友達と恋愛談義に花を咲かせ、その溢れ出る自意識と、フッとチラつく芋っぽさがいい塩梅で混ざり合い、早い話結構みていて痛い女子である。ただ、「じゃあお前はどうだったんだよ、人のこと棚にあげやがって!」と言われたら、そう、正直私にもあった、振り返るのも躊躇うほどに恥ずかしい自意識過剰時代…。

中学高校時代って一番ヒエラルキーに敏感な時期ではなかっただろうか。私は中学時代にカーストでいうとバラモンクラスの友達と仲良くする為にオタクを封印して(そして隠れオタクに転職)、結果的にオタクな友達と疎遠になったりした。結局自分はバラモンはおろかクシャトリヤにすらなれたわけではなかったと思うが、恐ろしく盲目な青春時代故の苦い思い出である。

でも乃里子を見ていると、「あ、私もこんな時代があって良かったよね、恥ずかしいけど、恥ずかしいことを受け入れていいんだよね。」と、何か乃里子に励まされている感じがするのだ。

もし乃里子が芋っぽくなかったら、きっとひねくれた私の自尊心にはより沿ってくれなかっただろう。彼女が美人で垢抜けた女子高生だったとしたら、「あなたもどうせバラモン階級の口でしょ、そういうのは少女漫画でやってよ、私の気持ちなどわかるもんか。」と私自らシャッターをおろしてしまうからである。

乃里子が芋っぽいから、穴があるなら入りたいくらい恥ずかしい記憶を思い出しても皆嫌味を感じずに受け入れることができるのではないだろうか。

それに芋っぽくても、将来はおしゃれなポテトグラタンになれるかもしれないし、料亭の肉じゃがになれるかもしれない。乃里子よ、これからも沢山の思春期の心に寄り添える女子であれ。

 

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